**序章(イントロダクション)
文明構造から教育を読み解くという試み**
戦後日本の教育は、長らく「制度疲労」や「現場の混乱」といった言葉で語られてきた。
しかし、これらの表層的な問題の背後には、より深い構造的問題が存在する。
それは、教育制度が本来果たすべき役割――文明の自己再生産装置としての機能――が、戦後の制度形成過程において大きく損なわれてきたという事実である。
教育は、単なる知識伝達の場ではない。
教育は、文明が自らの価値・倫理・世界観を次世代へと伝えるための中心的メカニズムである。
したがって、教育制度の分析は、文明の構造そのものを理解することと不可分である。
本書が提示するのは、
日本文明を「深層・中層・表層」の三層構造として捉え、
教育制度をその三層にマッピングするという新しい分析枠組みである。
- 深層:神話・祭祀・共同体倫理・家族・地域文化
- 中層:国家制度・官僚制・学校制度
- 表層:戦後憲法・民主主義・人権・グローバル規範
この三層が本来の順序で連続しているとき、文明は安定性と柔軟性を両立する。
しかし戦後日本では、この三層が断線し、逆転した。
- 深層は制度から排除され
- 中層は表層文明の管理者に変質し
- 表層文明が現場文化として固定化した
この逆転構造こそが、戦後教育の根本的問題である。
本書は、日教組の歴史的変遷、教育基本法改正、文科省の文化構造といった具体的事例を通じて、
この逆転構造を可視化し、教育制度の再構築のための理論的基盤を提示する。
本書の目的は、過去を批判することではない。
むしろ、日本文明の連続性を回復し、教育を本来の役割へと再定位するための新しい地図を描くことにある。
読者には、教育を「文明の問題」として捉える視点を共有していただきたい。
その視点こそが、戦後教育の混乱を超え、日本文明の未来を切り開く鍵となる。

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